ポータブルトイレ完全ガイド6つのポイント:選び方やメリデメから、介護保険・処理方法まで

在宅介護における重要な福祉用具であるポータブルトイレについて、種類や選び方、メリット・デメリットや処理方法まで詳しく解説します。高齢化社会が進む中、在宅介護の現場でポータブルトイレの需要は年々高まっています。適切な製品選びと使用方法を知ることで、介護の質を大きく向上させることができます。
また、記事の最後でポータブルトイレの課題である「臭気」、「清掃・メンテナンス」、「衛生管理」、「使用者・介護者の心理的抵抗感」を解決してくれる、近年注目を浴びるシステムについても紹介します。
目次
ポータブルトイレとは
ポータブルトイレは、寝室やリビングなどに設置できる移動式のトイレです。通常のトイレまでの移動が困難な方の生活を支援する重要な福祉用具として位置づけられています。主に以下のような状況で必要となります:
- 寝たきりや歩行困難な方の排泄ケア
- 夜間頻尿がある方の転倒予防
- 移動に不安のある高齢者の生活支援
- 介護者の負担軽減
介護保険制度での取り扱い
ポータブルトイレは介護保険の助成対象となっており、原則として要介護・要支援認定を受けている方が利用できます。介護保険の指定を受けている福祉用具販売事業者から購入した場合は、購入後の申請により、10万円を限度額として購入費の7割から9割が払い戻されます。指定を受けていない福祉用具販売事業者から購入した場合は助成が受けられません。ケアマネジャーに相談することで、自身の状況に合わせた最適な利用方法を見つけることができます。
参考URL:
埼玉県越谷市
https://www.city.koshigaya.saitama.jp/kurashi_shisei/fukushi/kaigohoken/ninteiari/fukusiyougu.html
神奈川県川崎市
https://www.city.kawasaki.jp/templates/faq/350/0000012957.html
愛知県岡崎市
https://www.city.okazaki.lg.jp/faq/002/128/p030761.html
ポータブルトイレの種類
家具調トイレ(木製)
家具調トイレは、見た目の配慮が特に優れた製品です。
- インテリアに自然に溶け込む木目調のデザイン
- 普段は椅子として使用可能なタイプもあり
- 見た目の抵抗感が少ない
- 価格帯は比較的高め
樹脂製トイレ
最も一般的で使いやすい樹脂製トイレは、実用性に優れています。
- プラスチック素材で軽量
- お手入れが比較的簡単
- コストパフォーマンスが良好
- デザイン性はやや劣る
金属製トイレ(コモード型)
医療施設でもよく使用される、信頼性の高いタイプです。
- 安定性が高く、耐久性に優れる
- 軽量で持ち運びしやすい
- 医療機器的な外観
- 価格は中程度
ベッドサイド型トイレ
寝たきりの方や、介助が必要な方に特に適しています。
- ベッドからの移乗に適した設計
- 高さ調整が可能な機種が多い
- 重量があり固定式に近い
- 安定性は高いが移動には不向き
ポータブルトイレの機能
基本機能
どのタイプにも共通して搭載されている基本的な機能です。
- 取り外し可能な便座とバケツ
- 姿勢保持のための背もたれ
- 使用者の身長に合わせた高さ調節機能
- 立ち座りをサポートする肘掛け
快適機能
より快適な使用感を実現するための付加機能です。
- 冷たさを軽減する暖房便座
- 臭いを抑える消臭・脱臭機能
- 長時間の座位でも快適なクッション性
- おしりの清潔さを保つシャワー洗浄機能
安全機能
使用時の事故防止のための重要な機能です。
- 使用時の安定性を確保する転倒防止構造
- 滑りにくい素材の使用
- 姿勢に合わせた背もたれ角度調整
ポータブルトイレの選び方
適切なポータブルトイレの選択は、快適な介護生活の実現に大きく影響します。
使用者の状態に応じた選択
使用者の身体状況や認知機能に合わせて選択することが重要です:
- 自力での立ち座りが可能か
- 可能な場合は標準的なタイプ
- 困難な場合は肘掛けの形状や高さ調整機能を重視
- 全介助の場合はベッドサイド型を検討
- 認知症の有無と程度
- 軽度の場合は使いやすさを重視
- 中度以上の場合は安全機能を重視
- 見守りが必要な場合は介助者の使いやすさも考慮
- 介助者の有無と介助方法
- 介助者の体力や身長も考慮
- 介助スペースの確保が可能な製品を選択
- 清掃のしやすさも重要な選択基準
設置環境の確認
設置場所の条件を確認しましょう:
- 寝室の空きスペース:
- 十分な設置スペースの確保
- 周囲の家具との関係性
- 換気条件の確認
- ベッドからの移動距離:
- 安全な移動が可能な距離を確保
- 夜間の移動を考慮した配置
- 介助者の動線確保:
- 介助に必要な空間の確保
- 緊急時の対応スペース
- 床材との相性:
- フローリングの場合は傷防止対策
- カーペットの場合は安定性の確認
具体的なチェックポイント
- 座面高
- 使用者の身長に合わせた適切な高さ
- 立ち座りのしやすさ
- ベッドとの高さ関係
- 便座形状
- 体格に合った大きさと形
- 座り心地の確認
- 褥瘡予防への配慮
- 耐荷重
- 使用者の体重に対する余裕
- 安全係数の確認
- メンテナンス性
- 日常的な清掃のしやすさ
- 部品の取り外し方法
- 消耗品の交換頻度
排泄物の処理方法・捨て方・洗い方
適切な衛生管理は、快適で安全な使用環境の維持に不可欠です。
日常的なお手入れ
- バケツの洗浄
- 使用後は毎回水で洗い流す
- 消毒液での定期的な消毒
- 完全に乾燥させる
- 便座周りの清掃
- 除菌ウェットティッシュでの拭き取り
- 特に接触部分の入念な清掃
排泄物の処理手順
- 基本的な手順
- 排泄物をトイレに流す
- バケツ内を洗浄
- 消臭剤・処理剤の使用
- 衛生管理のポイント
- 定期的な消毒実施
- 感染症予防の観点からの取り扱い
- 手袋着用と手洗いの徹底
ポータブルトイレのメリット・デメリット
以下のメリット・デメリットを踏まえた上で、使用者と介護者の状況に応じて、最適な製品選択と使用方法を検討することが重要です。
メリット
ポータブルトイレには、以下のようなメリットがあり、介護における負担を部分的に軽減することができます。
- 夜間のトイレ移動による転倒リスクの軽減
- 体調不良、下痢等の緊急時の対応がスムーズ
- 介護者の身体的・精神的負担軽減
- 排泄の自立支援に効果的
デメリット
一方で、使用者、介護者両者が感じるデメリットも存在します。
- 臭気の問題
- 清掃・メンテナンスの手間
- 衛生管理の難しさ
- 使用者の心理的抵抗感
- 介護者の心理的抵抗感(特に家族間の場合)
- 居室の雰囲気への影響
新しい選択肢:排水圧送ポンプの活用
前述のポータブルトイレのデメリットを解決する新しい選択肢として、便器と排水圧送ポンプを組み合わせたシステムが注目されています。このシステムにより、通常のトイレと同様の環境を再現し、以下のような快適な在宅介護環境を実現できます。
- 自動での排泄物処理が可能
- 臭気問題の大幅な改善
- 清掃の手間を最小限に
- 衛生面での安心感
- 使用者の尊厳に配慮
参考事例
住宅の物置スペースに新たにトイレを増設
使用頻度の低かった個人邸の物置スペースを、トイレとしてリフォームした事例です。


【課題】物置スペースから既存の排水管まで距離があったため、そこまで配管を伸ばすには大がかりな工事が必須。
【結果】SFA排水圧送ポンプ「サニアクセス3」の導入によって、配管工事をせず最小限の工事のみでのリフォームに成功。
その結果、時間と経費を節約して物置スペースをトイレにリフォームできました。
受託の2階の収納スペースにトイレを増設
2世帯住宅で、トイレは1階に1つしかなく困っていた事例です。

【課題】2階にトイレを増設したいが、排水勾配が取れず大掛かりな施工の必要。
【解決策】SFA排水圧送ポンプ「サニアクセス3」を採用することで、使用していない収納スペースをリフォームし、わずか1日で簡単にトイレを増設。
その結果、1階まで毎晩トイレに行くことに苦労されていたご高齢の方が、快適に過ごせるようになりました。
排水圧送ポンプとは
排水圧送ポンプとは、モーター駆動によるポンプで強制的に水を送り出すことで排水を実現します。薄型設計・省スペース・低価格・短工期で、あらゆる場所にトイレを簡単に設置できます。
トイレの排水方式として、重力により排水管へ排水を誘導する方式(自然排水)が一般的です。しかし、後から自宅にトイレを設置する場合には、太い配管が通らない、もともと設置されている配管までの距離が遠い、床下工事ができない等の理由により自然排水が困難なことが多く、トイレの増設を諦めてポータブルトイレの利用を検討される方が多いと考えています。
このような自然排水が困難な場所でも、排水圧送ポンプにより排水を物理的にコントロールすることで、トイレの設置が可能になります。
排水圧送ポンプの気になるポイント
金額
介護用のポータブルトイレの価格は、安価なもので定価30,000円台から販売されており、温水シャワーや暖房便座など通常のトイレにもある機能をもったものは、200,000円近い金額のものも販売されています。排水圧送ポンプとトイレを組み合わせたシステムを導入する場合、工事が必要とはなるものの、工事自体は1日程度で完了し、目安としてトータルで300,000円程度(排水圧送ポンプ + TOTO/LIXIL/Panasonic等のお好きなトイレ + 工事費)で済むケースもあります。快適さ・QOL(生活の質)の高さと、金額を比べたときに、費用対効果は非常に高いと言えるでしょう。
介護保険を利用できるか
介護保険の対象になるケースもあるため、詳しくは弊社や工事店様にご相談ください。
どのような種類があるのか
サニコンパクトプロはトイレ部分と排水圧送ポンプがセットとなっています。

リモコン型のシャワートイレなど、自分の好みでトイレや便座を選びたい場合は、サニアクセス3にTOTO/LIXIL/Panasonic等の市販のトイレを組み合わせることもできます。

まとめ
本記事では、ポータブルトイレの種類や選び方、メリット・デメリットや処理方法まで詳しく解説しました。介護の質を高めるためにも介護者や使用者の状況に応じて適切な製品を選択しましょう。
また、より通常のトイレと同様の環境を実現できる排水圧送ポンプを活用した仕組みについても紹介しました。これまで知らなかった方も多いかと思いますが、使用者、介護者のご負担を踏まえて、ポータブルトイレと合わせて検討対象に入れていただけると幸いです。